振り袖の販売レンタル業『はれのひ』。
今年の成人式を前に突然店を閉じ、多くの新成人が晴れ着を着られなかったことが問題となりました。
その後、同社は破産となり、返済のあてのないまま売上高を粉飾した決算書類で銀行から融資を受けたとして、篠崎社長は詐欺容疑で逮捕されました。
具体的にどのように粉飾決算をしたかは不明ですが、
仮に報道にあるように、架空の売上高を計上したとすると、
仕訳は、
(借方)売掛金 5,000万円 (貸方)売上 5,000万円 という仕訳になります。
この売掛金が回収されて初めて売掛金が現金になるのですが、架空の売上のため回収されることはないです。
金融機関は決算書の内容を信頼して融資を行ったのでしょう。
そこで、架空の売掛金の回収状況を精査することになりますが、回収されたと見せかけるため、売掛金の消込を行うことになります。
通常であるならば、
(借方)現金預金 5,000万円 (貸方)売掛金 5,000万円
となるべきところを
(借方)銀行借入金 5,000万円 (貸方)売掛金 5,000万円
という仕訳をきったらどうなるでしょう。
これは、返済していない借入金を回収されない(架空の)売掛金と相殺しています。
おそらく、複数の金融機関と取引があったであろうと予測されますので、A銀行に出す決算書には、A銀行の借入残高は正確な金額を載せて、B銀行の借入金を売掛金と相殺することにより銀行借入金を少なく見せかけてA銀行から融資を取り付けていたことが考えられます。
この仕訳を計上することで、架空売上 5,000万円の利益がそのまま決算書に計上されることになります。
この手法で、他の銀行にはその銀行用の粉飾された決算書が出されていた可能性があります。
銀行はこの粉飾決算書を信用して、融資を実行することになります。
仕訳は、
(借方)現金預金 5,000万円 (貸方)銀行借入金 5,000万円
となり、『はれのひ』の口座に5,000万円が入金されます。
そして、この5,000万円が社長の給与などに充てられていたとみられます。
このことが、今回の詐欺容疑となったのです。
これは、粉飾決算の一例ですが、一度粉飾決算に手を染めると、決算書を良く見せようとすればするほど、粉飾の金額が積み上がり、つじつまが合わなくなります。
粉飾決算は身を亡ぼすことになるのです。